腕時計の基本 クロノグラフ
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導入文

クロノグラフってよく聞くけど、どんな機能か分からない・・・このようなお声をよく頂きます。
時計用語は専門的で分かりにくい部分があるため、難しく感じてしまうものですよね。

そこでこの記事では、「クロノグラフ」がどのような機構なのか。どんな使い方があり、どんなモデルが人気なのかを徹底解説いたします!

見た目にかっこいいクロノグラフ。理解を深めることで、いっそう魅力が増していきます。

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クロノグラフとは

クロノグラフは「特定の経過時間を計測するための機構」です。日本人に馴染みのある呼び方をすれば、ストップウォッチ機能と言えます。一般的なクロノグラフは時分針の他に「クロノグラフ針」を備えており、この針をスタート・ストップボタンで制御することで任意の時間経過を計測します(詳細な使い方は次項で解説)。

機械式腕時計には様々な機構が存在しますが、その中でもクロノグラフの需要はトップクラスです。

クロノグラフは時間を計測できるという多機能性に加え、文字盤の配列がメカニック!秀逸なデザインになっていることが多いことが人気の背景として挙げられるでしょう。

そのため、各ブランドの定番モデルには必ずと言ってよいほどクロノグラフ搭載機がラインナップされています。

なお、「クロノグラフ 」という言葉は、ギリシア語の「クロノス=時間」と「グラフォス=記す」を合わせた造語です。クロノグラフの原型であった時計が”文字盤上にインクの滴を垂らして経過時間を記した”ことが由来となっています。

ちなみに現存する資料やクロノグラフ機構から、1816年にルイ・モネが発明し、1822年にニコラ・マシュー・リューセックが「クロノグラフ」と命名・特許取得したことが歴史の始まりとされています(余談ですがルイ・モネは時計の歴史を200年早めたと名高いアブラアン=ルイ・ブレゲの共同制作者で、後に計測機構としてのクロノグラフと時計を初めて一体化させたのはこのブレゲと言われています)。

時計の精度に関する公的規格「クロノメーター(COSC)」と混同しがちなので、要注意です!

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クロノグラフの基本的な使い方

クロノグラフは一見すると複雑ですが、使い方は至ってシンプルです。

タイム計測の基本は「スタート→ストップ→リセット」の3段階で行われます。

なお、操作の仕方は簡単ですが、機械式時計のクロノグラフは数百円で購入できる電池式ストップウォッチとは違い、非常に緻密な設計で作られているため操作方法を誤ると壊してしまうことがあります。

正しい操作方法をご説明しますので是非参考にしてください。

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操作① 2時位置のプッシュボタンを押してスタート

クロノグラフ プッシュボタン
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一般的にクロノグラフはリューズの上に位置する2時位置のボタンにより計測がスタートします。

しかしながらモデルによって位置が異なる場合があるので、取扱説明書をよくご覧ください。押し心地に関してもモデルによって差があり、簡単に押し込めるモデルもあれば、奥深くまで押し込んで作動するモデルも存在します。147文字

操作②もう一度2時位置のプッシュボタンを押すことでストップ

クロノグラフ プッシュボタン
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もう一度2時位置のプッシュボタンを押すことで、計測はストップします。ストップした状態から計測を再開したい場合、もう一度同じボタンを押すことで再開されます。つまり2時位置のボタンは押すことで「スタート」「ストップ」が繰り返されることになります。121文字

操作③4時位置のプッシュボタンを押すことでリセット

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計測が完了したら4時位置のプッシュボタンを押すことでリセットされます。

注意しなければいけないのはリセットするときは必ずストップさせてから行うこと。この順序を守らないと、思わぬ不具合や故障に繋がってしまいます。

こちらもモデルによって位置が異なる場合があるので、モデルに合わせた操作を心がけましょう!148文字

クロノグラフの文字盤の見方

各種クロノグラフ針
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クロノグラフは2本から3本の独立した針が動くことにより、時間を計測します。一般的な時計は中央に秒針が配置されていますが、クロノグラフは中央にクロノグラフ針が配置されています。

そのため通常の秒針はインダイヤル(文字盤の中の小さな文字盤)に搭載されることが多いです。

2時位置のプッシュボタンを押すことで、クロノグラフ針がスタート。クロノグラフ秒針は、60秒で文字盤上を1周します(これまた、モデルにもよりますが)。クロノグラフ秒針が60秒を超えると、文字盤に独立して設けられた「積算計」に経過分数と時間数がそれぞれ記録される仕組みです。

具体的には1分が経過すると30分積算計が1目盛り動き、そして1時間が経過すると12時間積算計が1目盛り動く仕組みとなっており、この3つの針の位置を見ることでスタートしてからどの位時間が経過したのかが分かります。

また、一般的なクロノグラフは「30分積算計」と「12時間積算計」が配置されていますが、「60分積算計」と「24時間積算計」が搭載されているモデルも存在します。450文字

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タキメーター?テレメーター?クロノグラフのメーターの種類

クロノグラフはベゼルにメーターが付いているモデルが存在します。実はこの「メーターの種類」によってクロノグラフで出来ることに違いがあります。

ここではクロノグラフに備えられた、いくつかのメーターの種類をご紹介しますので、是非ご覧になってください。121文字

①速さを計る「タキメーター」

オメガ タキメーター
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タキメーターはベゼルに刻まれた目盛り(数字とドット)とクロノグラフ針を用いて平均時速を割り出すことができます。タキメーターを採用するクロノグラフは多く、機能以上にデザインとしての趣が強いです。

ちなみにタキメーターの「タキ(tachy-)」は早さを意味する接頭語です。
計測方法は通常の操作と同様に「スタート・ストップ」で計測します。

例えば車の時速を割り出したい場合、車の走りはじめと同時にクロノグラフをスタートさせ、“1km”走行した地点でストップボタンを押します。その時にクロノグラフ針が指しているタキメーターの目盛りが時速になります。

1km走行した時点で30秒の位置にクロノグラフ針があったとすると、タキメーターのメモリでは120を指していることになります。すなわちこの時の時速は120Km/時です。

ちなみにタキメーターベゼルとクロノグラフ針を使って、「1時間あたりの作業量」を計測することも可能です。

ある作業を開始してから終了するまでを、クロノグラフで計測します。終了時点で30秒だった場合、タキメーターのメモリは120。すなわち1時間あたり、その作業は120回行えることを意味しています。

タキメーターは「オメガ スピードマスター」「タグホイヤー カレラ」「ロレックス デイトナ」など、多くのスポーツモデルに採用されており、クロノグラフの象徴的な機能となっています。585文字

②距離を計る「テレメーター」

ユンハンス テレメーター
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テレメーターは主に戦時中に使われていた機能です。大砲の発砲する光を確認してスタートボタンを押し、発砲した音が聞こえたら、ストップをするという手順を踏むことで戦車や軍艦までの距離を測定していました。

ちなみに「テレ(tele-)」は遠距離を意味する接頭語です。

現在でも光と音の速度差を利用して距離を割り出す機能として搭載される時計はございます。

この画像では、赤い円の部分がテレメーターです。

測定時間は最長1分で、20kmまでの測定が可能となっています。例えば雷が光ったと同時にクロノグラフを稼働させ、落雷の音とともに停止させた時、クロノグラフ針が指すテレメーターの位置が落雷地点までの距離ということになります。

なお、テレメーターを単体で搭載していることは珍しく、ほとんどがタキメーターとセットで搭載されています。354文字

【参考モデル:ユンハンス マイスターテレメーター 027/3380.00】

③脈拍数を計る「パルスメーター」

パルスメーター パテックフィリップ
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目盛りに基準値として書かれた脈拍数を打った時点の経過時間で割り出す機能をパルスメーターと呼びます。pulseは脈のことですね。
使い方は通常の操作と同様で「スタート・ストップ」で操作します。まず、クロノグラフをスタートさせると同時に脈を測り始めます。時計によって異なる基準回数(15回の時計なら15回)拍動したところでストップを押します。このときに、クロノグラフ針が指している数字が、1分間の脈拍数です。201文字

【参考モデル:パテックフィリップ コンプリケーション 2カウンタークロノグラフ パルスメーター 5170G-001】

④十進法で表記「デシマルメーター」

クロノグラフ デジマルメーター
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デシマルメーターはプロフェッショナルなパイロットの為に作られたメーターです。文字盤中央の赤い円状の目盛りで航法の計算を単純化できる1分100DMに換算するのが目的です。ちなみにデジマルとは10進法のことです。

距離は10進法なので、60進法の「秒」ではなく十進法「DM」が使われます。10DMで10海里移動できれば、「速度は100ノット/分」と判りやすく、暗算でも処理しやすくなっていることがポイントです。202文字

【参考モデル:ブライトリング ナビタイマー モンブリラン01 A033G09KBA(AB0130)】

⑤呼吸数を図る「 アズモメーター」

アズモメーター
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1分間当たりの呼吸数を計るための目盛りを備えたクロノグラフです。ちなみにathmaは喘息(ぜんそく)のことです。

通常は呼吸15回に要する時間を計測し、クロノグラフ針が止まった所の数字が1分間の呼吸数を示します。105文字

出典:https://www.hautehorlogerie.org/jp/

3つ目と2つ目クロノグラフ

デイトナ 116500LN
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クロノグラフには3つ目タイプと2つ目タイプのクロノグラフが存在します。どちらも機能性は同じですが、ムーブメントの設計やデザインに合わせて、どちらかが採用されます。

現在の主流は3つ目ですが、レーシングウォッチを中心に2つ目も人気があり、どちらを選ぶかはクロノグラフを選ぶ際の大きなポイントです。146文字

クロノグラフの魅力と注意点

ブライトリング 時計
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クロノグラフの人気の理由は機能よりもメカニカルなデザインによる部分が大きいです。見た目のカッコよさを重視して購入に至る方は多く、各メーカーの人気モデルを見るとクロノグラフを搭載しているモデルがとても多いです。

機械のみで時間や距離を計測できるクロノグラフ機構にはロマンがあり、文字盤一面に針が展開される美しさは他の時計では味わうことが出来ない魅力がありますよね。

ただし、クロノグラフを購入する際に知っておきたいのが維持コストです。

普通の3針モデルと比べてクロノグラフはとても複雑な機構であるため、オーバーホールや修理にかかる金額が普通の3針モデルより割高になります。平均して1.5倍ほどメンテナンス代が高くなる計算です。

こういった維持コストを少しでも抑えるために知っておきたいのが、「正しい取り扱い方法」です!

精密なクロノグラフは振動や衝撃に弱い個体も多く、針ズレやプッシュボタンが外れてしまうといったトラブルは多いもの。そのため激しい運動の際に身に着けたり、落下に気を付けることはきわめて大切です。

また、クロノグラフ針を秒針がわりとして稼働させることも、パーツ摩耗を促進します。クロノグラフ針は、使わない時はゼロ位置でストップさせておきましょう(ただしパテックフィリップのクロノグラフは、秒針がわりの稼働にも耐えうるのだとか!さすがパテックフィリップですね)。

さらに、定期的なオーバーホールも重要です!調子が悪いのを放っておいて、修理代が思わぬ高額になってしまったという声をよく頂きます。定期的なメンテナンスによって不具合や故障を未然に防ぎ、末永く大切に愛用していきたいですね!689文字

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